近年、中古住宅を購入する人で利用が増えている建物状況調査(インスペクション)と呼ばれる制度があります。購入予定の物件を専門家に依頼して、建物の劣化状態を調査してもらうサービスを指します。実際、インスペクションを依頼するとしたら、いつがベストなタイミングなのでしょうか?既存住宅状況調査技術者と宅地建物取引士の資格を有するスタッフがベストなタイミングとその理由を解説します。
建物状況調査(インスペクション)とは
建物状況調査とは、既存住宅の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により調査するものです。瑕疵がないことを保証するものではありませんが、住宅の品質に関する情報を提供することにより、安心して取引ができるよう、劣化事象等を把握し、明らかにするものです。引用:国交省資料より
建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が実施します。構造耐力上主要な部分に係る部位と雨水侵入を防止する部分に係る部位を調査します。
インスペクションのタイミングは売買契約前!
結論から申しますと、建物状況調査(インスペクション)のベストな実施タイミングは売買契約前です。2020年に民法が改正され、従来の「瑕疵担保責任」は、「契約不適合責任」へと改められました。よって売主は、買主に対し契約不適合責任を負う可能性があります。しかし、契約不適合責任は任意規定であるため、その期間を短くしたり、特約で免責とすることも可能です。買主としては、建物の状態が分からないまま不動産を購入することは、リスクの高い契約となってしまいます。
購入の検討者としては、売買契約の前に「雨漏り」はしていないか、建物は「傾斜」していないか、床下に「白蟻」が発生していないかなど、売主、仲介業者が把握していない不具合について事前に専門家に調査を依頼することが望ましいと言えます。契約後、入居後に不具合が分かった場合、「契約不適合」の期間が過ぎていたり、免責となっている場合があるからです。
申込時に購入条件として、インスペクションの結果を加える
不動産を購入するにはまず、買主が申込書を記入し、売主へ条件を打診をします。売主は購入条件を承諾するのか、売主からさらに売却条件を付けて返答するか、または申込を却下することもできます。
よって買主は以下のような売買条件を申込書に加えることで、リスクを低下させることが出来ます。中古住宅の場合は、どこかに劣化事象が生じている可能性が高いため、特に重要視するポイントを購入の条件としておきましょう。
例)リフォーム済住宅を購入し、そのまま入居を予定している場合
- 売主は建物状況調査(インスペクション)実施を承諾すること
- 建物状況調査の結果において、雨水の侵入・構造耐力上主要な部分に係る、劣化事象がないこと、または売主が劣化事象に係る費用を負担し修繕を行うこと。
例)購入後に小規模のリフォームを予定している場合
- 売主は建物状況調査(インスペクション)実施を承諾すること
- 建物状況調査の結果において、雨水の侵入・構造耐力上主要な部分に係る、劣化事象がないこと
- 上記劣化事象が有った場合でも、買主の予定修繕費用〇〇万円を超えないこと
例)購入後に中・大規模リフォームを予定している場合(多額の修繕費用が掛かる劣化は除く)
- 売主は建物状況調査(インスペクション)実施を承諾すること
- 建物状況調査の結果において、壁・柱・床などで6/1,000以上の傾斜などがないこと
- 建物状況調査の結果において、小屋裏、天井、内壁などに雨水の侵入に係る、劣化事象がないこと
- 上記劣化事象が有った場合でも、買主の予定修繕費用〇〇万円を超えないこと
【注意点】
買主から多くの購入条件を付けてしまうと、売主も他の方に売りたい!となってしまう可能性もあり、お互いに折り合いつけれるように不動産業者を通して事前に相談してみましょう。
インスペクション後は修繕計画を立てる
建物状況調査(インスペクション)実施後は、建物の修繕計画を立ててみましょう。建物状況調査では、調査時点で劣化の有無の判断となりますが、購入後に建物を維持管理していくには、長期的な計画が必要です。屋根や外壁などは15年単位に塗装、給湯器は10年ごとに交換が必要になってきます。
部位 | 購入時 | 5年後 | 10年後 | 20年後 |
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屋根 | ||||
外壁 | ||||
給湯器 | ||||
浴室 | ||||
キッチン | ||||
トイレ | ||||
居室 | ||||
合計 |
具体的な部位ごとのリフォーム目安や費用については過去に解説したブログ記事を参照下さい。
【リフォーム相場】中古住宅の屋根・外壁リフォームは、いくらかかるのか?費用と修理時期を公開します!
【リフォーム相場】中古住宅の水廻りリフォームは、いくらかかるのか?費用と交換時期を公開します!
まとめ
ここまでご紹介したように、中古住宅の購入において建物状況調査(インスペクション)は非常に重要なサービスです。初めて不動産を購入する場合や、今までリフォームなど一度も経験したことが無い場合は、専門家(建築士)と相談した上で物件を購入することをおすすめます。
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株式会社OSCAR オスカー不動産(アピタ金沢店)
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2004年新卒入社後、工事管理、リフォーム営業、商品開発などの業務を歴任。2015年より中古住宅のインスペクション業務(検査)を担当。現在は不動産事業の仲介業務を担当。保有資格(宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、二級建築士、既存住宅状況調査技術者、耐震診断・耐震改修技術者)