古い家はそのまま売る?それとも解体?古い家を売る方法と注意点などを徹底解説

よくある売却相談の一つとして、古い家を相続したことによる売却というものがあります。ただ、この古い家ですが売却しにくい不動産の一つでもあります。古い家は物件の状態面などの理由から、新しい家に比べて売りにくい傾向があるため、適切な戦略のもと計画的に売却に取り組むことが大切です。

今回は、古い家の売却をご検討中の方に向けて、売却方法や注意点などついて解説します。古い家を上手に売却するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

1、古い家の定義

一言に古い家と言っても、実際には明確な定義や判断の基準は存在しません。ですが、判断の目安として考えられる基準について以下の2点をご紹介いたします。

・法定耐用年数
・耐震性

法定耐用年数

判断基準の1つ目は、「建築してからの年数が法定耐用年数を経過した建物かどうか」です。法定耐用年数とは、固定資産の資産価値が会計上なくなるまでの期間を定めた年数のことになります。これは主に税額を計算する際に用いるもので、あくまで税務上で定められた使用可能期間であり、実際に建物が使用できる期間とは異なります。

建物は定期的に修繕を行い維持管理することで長く快適に利用することが可能なため、耐用年数を超えているからといって一概に古い家とはいえません。ですが、法定耐用年数が金融機関でも建物の価値判断の目安となることは覚えておきましょう。

たとえば、木造住宅の法定耐用年数は22年です。実際は、22年が経過したからといって住めなくなるわけではありませんが、住宅ローンを利用する際に、金融機関が法定耐用年数を参考にして融資条件を判断することがあります。金融機関によっては法定耐用年数を過ぎていると、ローンの審査が厳しくなる可能性があるため、注意が必要です。

耐震性

もう1つの判断基準として、現在の建築基準法で定められている耐震基準を満たしているかどうかを挙げておきます。

現在の耐震基準が導入される前は、「10年に一度発生すると想定される中規模の地震(震度5程度の揺れ)でも建物が倒壊せず、破損の程度も補修可能な範囲の構造であること」が条件とされていました。

一方、1981年(昭和56年)6月から導入されている現在の新耐震基準では、「震度6~7程度の揺れで損傷はしても、倒壊・崩壊しない耐震性があること」が条件とされています。建築基準の変更により、新耐震基準を満たしていない家は「旧耐震基準で建てられた古い家」と判断されることが多く、特に住宅ローンの審査において厳しく判断されることがあります。

次に、古い家を所有するリスクも知っておきましょう。

2、古い家(空き家)を所有するリスク

古い家、特に人が住まなくなった空き家を管理もせず放置することには、いくつかのリスクがあります。ここでは人が住まなくなった古い空家を放置した場合の主なリスクとして、次の2点をご説明いたします。

・税金が高くなる
・倒壊、老朽化、衛生面の悪化の危険性がある

それでは、それぞれのリスクについて具体的に見ていきましょう。

税金が高くなる

空き家となった古い家を適切に管理せず放置した場合、税額が高くなったり、罰則が適用されたりするリスクがあります。

通常、居住用の建物が建っている土地には特例が適用され、固定資産税において以下のような軽減措置が認められています。

土地の広さ 固定資産税評価額の軽減措置
200㎡までの部分 1/6
200㎡を超える部分 1/3

ただし以下に該当する場合、この軽減措置を受けることができなくなる可能性があります。

  • 特定空き家等  :周囲に著しい悪影響を及ぼすと認められる空き家
  • 管理不全空き家等:特定空家等となる恐れのある空き家

市町村長(自治体)は「特定空き家等」および「管理不全空き家等」の所有者に対し、除却や修繕、立木竹の伐採など必要な措置をとるよう助言や指導、勧告、命令ができると定められています。所有者はこの助言や指導に従わず、勧告を受けさらに勧告を無視すると、住宅用地特例の適用が解除され、固定資産税が3~6倍になる恐れがあるのです。

所有している物件が「特定空き家等」および「管理不全空き家等」に指定された場合は、行政の応答に速やかに応じることが大切です。

倒壊・老朽化・衛生面の悪化の危険性がある

空き家となった古い家は、適切な管理をせずに長期間放置すると、建物が倒壊するリスクが高くなります。人が住まなくなった家は室内の風通しが行われないため、湿気がたまり、カビ・結露などが発生しやすくなります。加えて、雨や風による侵食、シロアリ被害などもあり老朽化が進みやすくなります。そのため、思っているより早く建物が倒壊する危険性があります。

また、衛生面の悪化にも注意が必要です。放置することで敷地に雑草が生い茂り敷地外へはみ出したり、白アリ、ムカデなどの害虫の発生、ねずみなどの害獣の巣になったりすることもあります。これらの被害が近隣に及ぶと、近隣トラブルにつながるおそれがあります。

ここまで古い家の定義や所有するリスクについて解説してきましたが、ここからは古い家の売却方法について見ていきましょう。

3、古い家の売却方法

古い家の売却方法ですが、主要なものとして次の5つの方法があります。

  1.  そのまま売りに出す
  2.  家を解体して土地として売る
  3.  リフォームして売る
  4.  空き家バンクに登録する
  5.  不動産業者に買い取ってもらう

それでは、それぞれの売却方法を順に解説していきます。

① そのまま売りに出す

古い家の売却では、そのまま売りに出すのが最もオーソドックスな方法です。きれいに管理されている物件や過去にリフォームを実施している物件は、販売できる可能性が高いので、そのまま売却することをおすすめします。

また、建物の劣化が激しく、ある程度のリフォームが必要な場合は、「古家付き土地」として土地代のみの評価に基づいた価格設定を行い売却するのも一つの方法です。買主によっては、状態が悪くても、そのまま居住用に使用することもありますし、リフォーム、リノベーションを行い再生住宅として検討することもあります。

「土地」での売却よりも手間はかからないため、可能であれば、古い家をそのまま売るのが手間も費用もかからずおすすめです。

② 建物を解体して土地として売る

建物を解体して土地として販売するというのも一般的な売却方法の一つです。管理状態が悪く傷んでいることで、住宅としての活用が難しい場合は、解体して土地として売ることも検討しましょう。

ただし近年、解体費用は高騰傾向にあります。前述のとおり、古い家はそのままでも販売できる可能性がありますので、自己判断で家を取り壊すことはせず、不動産業者に査定を依頼する際、土地としての売却について意見を聞くことをおすすめします。

③ リフォームして売る

古い家はリフォームして売る方法もあります。古い家の購入を希望する方の中には、自分好みにリフォームしたいという方も多いため、リフォームをせずに売却するのが一般的です。

しかし、古いままでは印象が悪く、売却に時間がかかる場合は、家の一部をリフォームすることも上手に売却する一つの方法です。特に水廻り設備はお家の印象に大きく影響します。そのため、それらの設備を交換しておくだけで、購入希望者の抱く印象は大幅に良くなるでしょう。各設備のおおよその交換費用を下記にまとめてみました。

設備 費用目安
キッチン 70万円~
お風呂 70万円~
洗面台 25万円~
トイレ 15万円~

解体するほど状態が悪いわけではないものの、そのままでは売りにくい物件は一部の設備を交換することを検討してみてはいかがでしょうか。

④ 空き家バンクに登録する

古い空き家を売るには、空き家バンクに登録するのも一つの方法です。空き家バンクとは、自治体やNPOなどが運営する、空き家の賃貸・売却を希望している人の情報を集め、空き家を利用したい人に紹介する仕組みです。空き家バンクは、一般的に仲介手数料が発生せず、不動産会社に断られてしまった物件でも登録が可能です。ただし、売却価格は著しく低くなる傾向があり、場合によっては無償となるケースもあります。

また、ほとんどの場合、売買契約は当事者同士で行うことになるため、物件や取引条件についてトラブルが発生する恐れがあることに注意しましょう。また、すべての地区において空き家バンクのサービスが提供されているわけではないため、「○○市 空き家バンク」といったキーワードでWeb検索して、売りたい家のあるエリアの情報を調べてみるとよいでしょう。

⑤ 不動産業者に買い取ってもらう

古い家を売却する場合、不動産買取を利用する方法もあります。不動産買取とは、不動産業者に家を売却することです。不動産買取であれば数日から数週間と短期間で売却することも可能です。ただし、不動産業者は再販売を目的として買取するため、買取価格は近隣相場の7~8割ほどになるケースが多いです。

また、取り壊しが必要な状態の古い家の不動産買取では、解体費用と転売益を差し引いた金額が設定されるため、売却価格はさらに安くなってしまうでしょう。不動産買取は、安くてもいいからすぐに家を処分してしまいたい、という方におすすめします。

4、古い家を売る時の注意点

ここからは、売却方法ではなく、古い家の売却でやってはいけないことなど、売却時の注意点について4つ解説します。スムーズに売却を進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

  1.  家財は事前に撤去すること
  2.  建物の解体は複数の不動産業者から意見を聞くこと
  3.  解体する場合は固定資産税を意識すること
  4.  自治体の補助金制度を確認しておくこと

① 家財は事前に撤去すること

古い家を売却するときは、家財を撤去する必要があります。家財を撤去しておかないと不動産会社に買取を断られたり、解体工事会社に解体を断られたりする可能性があるためです。解体工事会社は免許の関係上、産業廃棄物を処分できても家庭ゴミの一般廃棄物は処分できません。そのため、家屋に家財道具が残っている場合には、解体工事を請けてくれないこともあります。そのまま売るにしろ、取り壊すにしろ、古い家を売るなら家財の撤去は必須となるでしょう。

② 建物の解体は複数の不動産業者から意見を聞くこと

古い家を解体して売る場合、複数の不動産業者から意見を聞くようにしましょう。不動産業者によっては、古い家のまま販売できると判断することもあるからです。そこで、古い家が残っている状態で査定を依頼し、解体が必要か不動産業者に意見を聞いてみてください。「取り壊したときと、取り壊さなかったときの2つの売却方法について知りたい」と伝えれば、それぞれの売却方法での売却価格やメリット、デメリットについて教えてくれるはずです。

③ 解体する場合は固定資産税を意識すること

建物を取り壊す場合は、固定資産税の上がるタイミングを意識しましょう。固定資産税は毎年1月1日時点の状況を基準に算出されますが、土地の固定資産税には住宅用地としての軽減措置があります。これは土地に住宅が建っていることで適用され、土地の固定資産税が安くなるというものです。しかし、解体してしまうと、固定資産税の軽減措置が無くなり、土地の固定資産税が上がるため、全体としての固定資産税が高くなってしまうことがあるのです。

逆に言えば、1月1日時点で住宅が建ってさえいれば、その年は固定資産税の軽減措置が適用されるため、1月2日以降に取り壊して、その年の12月31日までの間に売却してしまえば、土地の固定資産税の軽減措置を受けたまま売却することが可能です。このように、解体を行う場合は次の1月1日を待ってから行うことをおすすめします。

④ 自治体の補助金制度を確認しておくこと

古い家を売却する際には、自治体の補助金制度も確認しましょう。解体や耐震リフォームに関しては、「国」が実施する補助金は存在しません。ただし、自治体によっては、解体や耐震リフォーム、また、空き家の再活用に関する補助金を用意しているところもあります。こちらでは、石川県内の市町村における建物解体に関する補助金の有無を調べてみました。補助の対象や補助金額などの詳細は各市町村のホームページをご確認ください。

穴水町 穴水町老朽危険空き家除却費補助金
内灘町 内灘町空き家利活用事業補助金
加賀市 加賀市危険空家等除却補助金
金沢市 金沢市危険空き家等除却費補助金
かほく市 かほく市空家等除却支援補助金
川北町 川北町空き家等解体事業補助金
小松市 小松市老朽危険空き家解体補助金
志賀町 志賀町老朽危険空き家等除却事業費補助金
珠洲市 珠洲市老朽危険空家等解体補助金
津幡町 津幡町危険空家除去等支援補助金
中能登町 なし
七尾市 七尾市老朽危険空き家等解消支援事業補助金
能登町 能登町空き家等解体事業補助金
野々市市 なし
能美市 能美市空き家等解体費補助金
羽咋市 羽咋市空家リフォーム再生事業除却費助成金
白山市 なし
宝達清水町 なし
輪島市 輪島市危険建築物除却補助金

解体に関する補助金のほかにも、空き家活用に関する補助金ど利用可能な制度があるかもしれません。古い家の売却をご検討中の方は各自治体の制度を調べてみてください。なお、補助金制度は都道府県が実施している場合と市区町村が実施している場合がありますので、それぞれ確認が必要になります。

まとめ

ここまで古い家の売却について解説してきました。古い家を所有するリスクとして、適切な維持管理を行わない場合に固定資産税が高額になることや、近隣住民に迷惑をかけるといったことがあります。

そのため、利用しない古い家は早めに売却することをおすすめします。その際、物件の条件や状態にもよりますが、古い家のままでも売却できる可能性は十分にあります。まずは査定を受けてみて、査定額を参考に、ご紹介した売却方法のなかでどれが適しているかを吟味し、納得のいく売却へつなげましょう。

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